地雷と野菜E.P.について

2025年1月22日にリリースする7インチレコード「地雷と野菜E.P.」はブックレットの封入がなく、歌詞もジャケットデザインの一部に組み込まれていてとても読みにくいので、ここのページで収録曲の歌詞と、その楽曲にまつわる簡単な解説を残しておく。


地雷と野菜II

A面1曲目は2nd Album「ききゅう」からシングルカットされた楽曲。
元々、ゲーム音楽用に楽曲提供したものをKiliKiliVillaコンピレーションアルバムへの参加に伴い同じ演奏データに歌詞を書き下ろし別の歌メロディで歌い直して作られたものだが、コンピ版からはさらにアレンジしており間奏のメロディなども違うものになっている。
原曲からの流れを意識的に組んでおり、「それでも我々はこの大げさな対比の元に明確に戦争を拒絶する」という意思を強固なものとして掲げた楽曲。数年前に受けたセルビアのファンジンのインタビューで「Food not bombsについてどう考えているか?」という質問に対して当時は無知で、うまく答える事ができなかった。ずいぶんと時を経たがこの楽曲を持ってその質問への返答ともなっている。

Food not Bombsとは

Food not Bombs(フード・ノット・ボムズ)は「兵器よりも食料を」という意味で、戦争と貧困への抗議の意味も込めらた非暴力的な社会変革運動の一つ。「食糧は特権ではなく権利である」という意思の元、パンクスやボランティアの人々によって行われている世界的運動。
食料品店やパン屋などから余剰食品や廃棄予定の食料などを提供してもらい、毎日の食事がままならない人だけでなく全ての人に対して無償で食事の提供を行なっている。また、宗教や思想に関わらず誰もが同じ食卓を囲めるようにヴィーガンフード、またはベジタリアンフードの提供が一般的。

【地雷と野菜II / Food not bombs II】


作詞:U 作曲:mari 編曲:ALKSLK

土を耕し種を蒔こう
誰かが無駄だと言ったとしても
水を与えて芽が出るまでは
気付ける人もごくわずか

根が張り枝葉が広がれば
明日を待てる実りもあるさ
地雷は野菜に敵わない
奪い合わずに分け合える

地雷よりも野菜を
戦場よりも農場を
爆撃よりも種まきを
戦車よりも荷車を
兵隊よりも農家を
銃声よりも歌声を
Fool choose war
Food not bombs

地雷と野菜
どちらが平和かどちらが優しいか
地雷と野菜
あまりに極論 それでも理想論

とても大変に思えることだけど
実は単純なことの積み重ね

大切なことは大体そうさ
あんがい些細なとこにある
大事なことは大体そうさ
小さなタネから育てなきゃ

必要なものはわかっているよ
いらないものはなおさらさ
誰からも奪われたくない
誰のものも奪いたくない

何度でも言わせてよ
地雷と野菜 どちらが平和か
何度でも言わせてよ
地雷は野菜に敵わない


シラフの唄について

A面2曲目に収録されている楽曲で、アルカシルカの結成にも関わっているとても大切な曲。
リベという日系ブラジル人の友人がボーカルUと二人でいるときに歌ってくれた歌の一つに「”シラフのやつには分からない”って曲を歌うよ。」と歌い始めたものでポルトガル語だったため全く意味は分からなかったが、そのタイトルからインスパイアされたもの。
当時、ボーカルのUが初対面でいきなり首元にナイフを突きつけられる出来事があり、その人に向けて書いた歌詞にもなっている。
英題の文法がめちゃくちゃで何度か変えたいと思うのだが、英語話者の友人から「そのままの方が良い」という言葉がいつもよぎってタイトルを変えられない。

【シラフの唄 / I don’t you, You don’t I】


作詞:U 作曲:mari


酒を呑めないやつに酔っ払った楽しさはわからないだろう
トリップしたことないやつにゃその景色は見えやしないさ
きみは人を殺したことが無いだろう人殺しの気持ちなんて分かりっこないんだ
恵まれた環境にいる俺は虐げられた人々の気持ちなんて分かるはずもない

俺はキミじゃないしキミも俺になれない
俺の気持ちなんて分からなくて当たり前さ
きみは俺じゃないし誰もきみになれない
だからきみのこと教えておくれよ

見た事ない
会った事はない
話した事もない
人は憎めない

行ったことはない
やったこともない
聞いたことしかない
声は届かない

知ってるつもりでいたけど何にも知らなくて決めつけるばかりの俺とキミさ
分かったふりしてるけど何にも分かっちゃない間違いだらけの俺たちさ
いつだって自分が正しいと誰もが歌う
いつだって自分が正しいと俺だって歌う

俺はキミじゃないしキミも俺になれない
分からないってことを分からなくちゃならない
俺もキミもあいつもみんな違うだろ
そんな当たり前の事言わせないでおくれよ

なかなか分かりあえる事はないよ
だけどだけど知りたい事ばかりさ
あれもこれも全部全部教えておくれよ
世界中の過去未来キミの気持ちもさ

シラフのやつに分からない事があるんなら
シラフのやつにしか分からない事もあるだろう



Hate & war? 2025について

B面1曲目に収録されている楽曲。これは1stアルバム「不条理不協和音」に収録されていた邦題”ラブアンドピースにクソくらえ”という楽曲を歌詞や曲調を一からアレンジし直したもの。
元々「ラブアンドピースなんて言葉をわざわざ掲げる必要のない平和な世界を目指すなら」という意図で逆説的な表現による楽曲だったが、自身が思っているよりも社会は理性的でも論理的でもなく、その不誠実さに飲み込まれていったことによって、今の時代では歌詞の捉え方が意図しているものとは真逆なものとして認識されそうだと感じ、よりストレートな表現へと変更した。編曲に関しては、1st Albumの時よりも輪をかけてヘンテコな仕上がりになっておりバンドの結成当初憧れていたASTAKASKの牧歌的なノリの曲へと少しだけ近づけた気がする。

【Hate & war? 2025】

作詞:U 作曲・編詞:mari 編曲:ALKSLK

「笑える明日」は全てを無視した先にあるわけではなくて
あの頃よりもどんどん滅茶苦茶になっていく世の中だから遠ざかっていく言葉を手繰り寄せなきゃいけない

恋人同士も仲違い
愛さえ崩れていくならば
確かに世界は噛み合わない
わがまま欲張りばかりだろ

愛が何かをおかしくさせて
憎しみが何かを壊していく

Hate and War
Hate and War
I hate War
愛と平和

投げ出したくもなるけれど
苦しむ人がそこにいて
悲しむ友がいるならば
それは遠い話ではない

あいつら何も分かっちゃない
バカなオレでも分かるのに
会いたい人がいるからさ
戦争なんてクソ喰らえ

ラブアンドピースに口づけを


地雷と野菜Iについて

B面2曲目に収録されているボーナス音源で、高円寺の駅前広場で一発録りしたもの。
元々は、戦争という不条理なものに対して、より不条理な方法で抵抗するという奇妙なリズムゲーム夢みるぴょんぴょんランドのために書き下ろした楽曲で、かなり作品テーマに重なる作りになっている。(一部歌詞が違うがゲーム音源はこちらから視聴可能。)
この歌詞を把握した上で”地雷と野菜II”を聴くとより解像度や理解度が上がるだろうと考え、急遽アコースティックで収録した楽曲になっている。
この曲のラストと”地雷と野菜II”の最初の歌詞が重なるので、どうかB面を聴き終わったらまたA面から聴き直して欲しい。

【地雷と野菜I / Food not bombs I歌詞

ピストルの弾が花びらになれば誰も痛い思いなんてしなくてすむのに
握りしめた爆弾がニンジンに変われば少しはお腹も膨れるのに
地面に埋まる地雷は嫌い 野菜に変われば良いのにな
平和な時代が見たいだけなのに 一体どうしてこうなるの

地雷と野菜
どちらが平和かどちらが優しいか
地雷と野菜
あまりに極論あまりにも理想論

どれだけ怖い思いをして
どれだけ辛い思いをさせる
涙をぬぐう理想論を
綺麗事と片付ける事はできない

時代が違えば僕ら友だちになれたのかなって言うけれど
そもそも僕らはなんのために誰のために争わされているんだっけ

ピストルにかかる指を離せば
誰かの未来も奪われはしない
握りしめた爆弾じゃ壊すことは出来ても
作ることも直すことも出来はしない

地面に埋まる地雷は嫌い
野菜に変わればと願いながら
平和な時代が見たいだけだから
土を耕しタネを撒こう

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